現代を生きるロミオとジュリエット、『世界で不運で幸せな私』

『世界で一番不運で幸せな私』
邦題だけ見るとよくあるラブコメのようだけど、原題はJEU D'ENFANT=「子どもの遊び」です。最近の恋愛映画は邦題で損している気がするんですよね。フタを開ければ意外と恋愛一辺倒ではないものも結構あるのに「わたしが○○した10の理由」だとか「○○なわたし」とか偏差値の低そうな邦題ばかりつけるから男性にスイーツ映画とバカにされるんですよ。まぁ大半が女性のロマンチスムを満たしてくれるものばかりというのは否定できませんが。

まぁそれはさておき。今を時めくフランスの女優マリオン・コティヤールが主演の映画です。幼馴染の男の子と女の子はそれぞれ小さい頃に心に闇を抱えています。お互いの淋しさを埋めあうようにおもちゃの缶を使ったイタズラゲームをしてきた二人は、大人になってもゲームを繰り返しからかい合います。本当は愛し合っているはずなのにこのイタズラゲームのせいで素直になれない二人。次第にエスカレートしていく“イタズラ”が導く二人の結末とは?クレイジーカップルの究極の純愛物語です。

このイタズラゲームのイタズラ度がですね、半端じゃないんですよ。無邪気だからこそ性質が悪い。私の中学の担任は子どもの頃にエイプリルフールだから親を騙そうと「学校の先生が事故に遭って入院した」と嘘をつきました。 それを信じた両親はすぐにお見舞いに行かなければとお見舞いの品を用意して先生に連絡してしまいました。それで嘘だとバレてがっつり怒られた訳です。いくらエイプリルフールといえどなんでこんな不謹慎な嘘ついたのだろうと大人の私たちは思いますが、善悪の判断がつかない子どもにとってはこれも単なるイタズラなんですよね。この映画の主人公の二人はこういった性質の悪いイタズラを大人になっても繰り返し、その様子はおもちゃの缶に描かれている回転木馬がぐるぐると回り続けているかのよう。

イラストレーターもこなす監督の作り出すビジュアルはとても幻想的です。幼少時代の黄色味が強くカラフルな画面は「アメリ」のような可愛らしさ。子ども独特の世界観を見事に表現していて、ファンタジーなシーンもあります。 しかし大人になるにつれて画面の色味は褪せていき、『トレインスポッティング』のような生意気さや鋭さが出てくる。

全編通してシャンソンの定番「バラ色の人生」が様々なヴァージョンで流れ、私は特にエンドロールのが気に入りました。確かフランスの歌手ZAZIEだったかな?彼女の曲は好きです♪

コミカルでシニックなのに、詩的で古典悲劇も含まれているところが異色だと思いました。現代版ロミオとジュリエットですね。

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