時代に抗う若者たち、『マイ・バック・ページ』

マイ・バック・ページ』(2011)
妻夫木聡×松山ケンイチダブルキャストによる全共闘時代の青春グラフィティー。
決して派手ではないし実在の事件を元にこの二人の人物を追っていくだけなので、映画的な盛り上がりには欠けるんだけど、暗い映画館の中に腰を据えてじっくり見るには適していると思う。

全共闘時代と言ってもすでに末期で、何も行動を起こせないままに終わらせたくない若者たちの最後の悪あがきとでもいえる。
今25歳の私はもちろんこの時代の話は両親から聞かせてもらったり村上春樹村上龍の某小説から得た知識しかない。
でも、「みんなで決起すれば世の中を変えられた」、若者の熱気にあふれていた時代になんとなく憧れを持っていたりする。
この映画に登場する自称革命家の梅山も、全共闘の最盛期に活躍した人たちや三島由紀夫、さらには彼らが拠点としていた部屋の壁に貼ってあった毛沢東チェ・ゲバラなどの革命家たちに憧れを抱いていたんだと思う。
梅山は、自分も彼らのように革命を起こし、その後は逃亡でもなんでもしてやる!そんな意気込みだけが先行して空回りしていたようだ。
実際、冒頭の大学サークルの討論会で梅山があっさり論破されてしまった時なんかは黙り込んだかと思うと「君は敵だ!このサークルは僕が作ったんだ!」とまるで子どものような発言をする。
それらしい言葉を並べ立てて調子のいいことを言っておきながら結局中身は空っぽ。
ちょっと非難されたり指摘されるとムッとしてみたり。
でも私自身大学時代を振り返ると、「何かデカいことをしてやる」と漠然と思いながら仲間と酒を飲んだり歌ったりした生活をしてくすぶっていたことがあるので、なんとなく梅山の気持ちもわかる気がする。

一方、若きジャーナリストの沢田は梅山の革命家ぶった口調や雰囲気に飲まれ、厄介なことに首を突っ込むことになる。
大人の目から見れば梅山が口ばかりの人間であることは簡単にわかるのに、沢田はC.C.Rのギター演奏と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』であっさり梅山を信じてしまう。
新聞や週刊誌ではまだまだ過激な弁論や運動の行方が注目される中、センチメンタルだと上司にバカにされた東京放浪記は意外と評判がよく微妙な表情をする。
自衛隊基地襲撃事件と逮捕によって一気に現実へと引き戻される。
「思想犯ではなく殺人犯」
思想で暴力が横行する時代の終幕だった。

昭和の雰囲気を出そうとインテリアや衣装などのディティールにこだわっていて粒子の粗い画面がかなりいい感じだったと思う。まぁ当時の姿を知る人にとっては違うよ〜ってなるのかもしれないけれど。
妻夫木は『69』、松山は『ノルウェイの森』でこの時代と縁のある二人なので、その演技力はかなり見もの。
結構長い映画なので途中で飽きちゃったという声も聞くんだけど、私は最後まで集中して見ることができました。
みんな言ってるけど、ラストのブッキーが泣くシーンは最高ですね。
生きた時代は違えど、こういう忘れられない一ページというものが誰しも青春時代にあるんだと思います。

ちなみに梅山はタバコを吸うときマッチ派、沢田はジッポー派というのがお気に入りです。

マイ・バック・ページ [DVD]

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