不肖の息子が下る、『コクリコ坂から』

コクリコ坂から』(2011)
1980年頃に『なかよし』で連載されたが不発に終わった『港の見える丘』が原作の『コクリコ坂』。
そういう点では『耳をすませば』と似ているのかもしれないけど、私はこっちの方が断然好きですね。

1960年代のノスタルジックな町を若い男女が相合傘しながら、俺たちは兄妹だという衝撃的な告白をする予告編を見て、なんか意外と面白そうじゃないか!!って思ったのです。
つまりこの二人の出生の秘密がなんかあれで物語が展開するってことでしょ?
そしてあのしっとりした主題歌と昨年の『借りぐらしのアリエッティ』の印象から、すごく静かな映画なんだろうなと予想していましたが、意外とジブリらしいお祭り騒ぎもあるし物語の展開もテンポよく進むし、最後まで飽きることなく見ることができました。アリエッティの時みたいに尻切れトンボな感じもなく収まったしね。

・熱い学徒
時代設定は1963年の横浜。
主人公の松崎海と風間俊は学生たちのクラブ活動の場である清涼荘、通称「カルチェ・ラタン」の取り壊し反対騒動の中で出会う。
当時の学生たちは己の思想に燃え、とにかく行動を起こす実直で団結力のある様子で描かれている。
数年後の大学闘争にしろ、みんなで決起して大人に立ち向かう学生の姿って私の憧れであったりするのでいいなぁ熱いなぁと思います。
カルチェ・ラタンはほぼ男子寮のような汚らしさとハリポタの寮みたいにちょっとファンタジックで異空間のような趣があり、まさに学生たちのお城であり秘密基地である。
硬派な男子とチャキチャキした女子のやりとりもまた甘酸っぱい感じがしてよい。
10代特有の男子と女子の距離感がね。

この映画を見た人たちの感想の中で、「なんだこのリア充映画はwww」と言っている人がいましたが、なんか視点がズレている気がしましたね。それこそ純粋に真摯に生きる人を嘲笑する現代のいやらしい目線というか。「共感できないからこの映画は面白くない」というのは違うと思うんですよね。そりゃ共感できたほうがより楽しめるのは確かだけど。


・コクリコ坂のフランス語
カルチェ・ラタンはご存知の通りパリのソルボンヌ大学などの大学が集まる地区であるカルチェ・ラタンにちなんで付けられているし、海のあだ名は「メル」でフランス語のla merから。タイトルである『コクリコ坂から』の「コクリコ」もcoquelicot「ひなげし」を意味していて、海の家の庭にはひなげしがたくさん咲いている。
今でもやたらフランス語をカタカナ表記にしてしゃれおつ感を出したがる傾向はあるけど、当時はもっとかぶれていたイメージがありますね。それこそサルトル実存主義謳歌されていた時代だし。


・どうでもいい話
広小路さんという下宿人の画家?の女性がいるんだけど、「広小路さーん」てのが「ヒロコおじさーん」に聴こえて吹き出してしまいました(笑)事前にそのネタをTwitterで知っていただけにね。
そして生徒会長のインテリイケメン水沼くんがもろタイプです(笑)


こんな感じでね、恋愛ものが好きな女子は結構気に入る人多いんじゃないかなと思いますよ。 あと世代が近い50代の人は懐かしいと感じるはず。
登場人物たちの表情が貼りついていて変化に乏しいとの声も聞かれましたが、ゲドに比べればだいぶ動くようになりました!!(笑)うん。あたしは吾郎を応援してるよ!!パパが偉大すぎるからね。
後半の二人の出生の秘密について展開する辺りでは、もう完全に乙女スイッチ入りましてポロポロ泣いてました(笑)最近涙もろくてねぇwww

コクリコ坂から (単行本コミックス)

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