荒野の決闘、『カウボーイ&エイリアン』

カウボーイ&エイリアン』(2011)

カウボーイと…え、エイリアン?!というこの異色の組み合わせに西部劇もエイリアンも好きなあたしは若干の不安と期待で胸をときめかせた。たぶん、馬にまたがったカウボーイが縄をぶんぶんしながらぎゃおーんっと喚くエイリアンを駆逐してうまいこと手なづけ、ゴールドラッシュにフロンティアしていったりする奇妙奇天烈なお話なのだろうと思っていたが意外にも堅実に西部劇していて、エイリアンがうまく溶け込めないままだった。ダニエル・クレイグが出ていなかったら途中で寝てたと思う。

荒野で目覚め泥まみれのクレイグたん。左腕には特撮物の変身ブレスレットみたいのが嵌めてあって取ろうとしてもびくともしない。サボテンの横でしょぼーんと座ってる画はすごく可愛かった。通りすがりの老人だろうが関係なくぼっこぼこにしてカウボーイスタイルに身を包む。これがまた決まっていてめちゃくちゃカッコイイ。もう超絶シブい。どうやら記憶を失くした罪人らしく、町で一番の権力者ドルハイド大佐のバカ息子に喧嘩を売られたり保安官に囲まれたりとにかく絡まれる。それでも冷静沈着、ポーカーフェイス(いつものしょんぼり顔)、マイペースなところが最強の男の風格が出ていてよかった。

ドルハイド大佐のバカ息子はもうほんとうにどうしようもないくらいバカで下品で親の顔が見てみたいもんだ!と思っていたらなんとハリソン・フォードでした(笑)その容貌は年老いインディ・ジョーンズ。冷酷で厳しい大佐っぽく言われているのになんで息子がこんなバカなのよ。そして結局は良き男良き父親面してなんか中途半端。そして一体どこにあたしのサム・ロックウェルが出ているの?とずっと探していたら最初っから出ていた冴えない酒場の店主でした。サム・ロックウェルと言ったらぷっつんクレイジーなキャラのイメージしかないのでこんなに地味な彼の姿は見たくなかったな。

前半はかなり正当な西部劇でエイリアンはいつ出てくるのかしら?クレイグの嵌めてる腕輪はいつ使うのかしら?と長らく待たされることになる。後半では町の人や盗賊や原住民などが一致団結してエイリアンを倒そう!おーっ!てなるけどエイリアンがこれまたクソ弱い。しかもぶっさいく。肩と首の筋肉がマッチョなお兄さん体型でお腹から口やら手やらが出てくる適当にエイリアンっぽい要素入れといたよみたいな。最近のエイリアンの弱体化と造形の雑さは本当にいかんと思う。カウボーイ&エイリアンと銘打ってるからにはエイリアンにだってもう少し気合を入れて欲しい。

↑ステルスのように旋回したり空中からの攻撃はなかなか迫力があってよかったけど肉弾戦はだめでした。

主人公は記憶を失ってるのでその過去の謎解きも一応ストーリーの要になってくるのだけどそこの掘り下げも足りないし、ドルハイド大佐の件は感動的な音楽なども流れたりするのだけどまったく感情移入できず置いてけぼりを食らう。どうせならもっと簡単な設定とキャラ作りでエイリアンとばっこんばっこんやるポップコーンムービーテイストでよかったんじゃないかなぁと思った。でもこれに懲りずに『サムライ&エイリアン』とか撮って欲しいよ。「あ、あの化け物は一体何者でござるか!!」とか言いながらさ。