27年間の歴史をピコピコにのせて、『トロン:レガシー』

トロン:レガシー』(2010)

まず、この映画を見るために1982年の『トロン』を見て予習したのですが、27年後の今作と見比べることでその映像技術の進歩を感じることができました。物語の内容はハリウッドが大好きな父と子の感動物語です。終了。え?今回は映画の細かい内容については触れませんよ。

今の私たちの生活では当たり前のようにパソコンや携帯電話を所有し、一般家庭にもインターネットが普及していますが、82年当時はまだインターネットもないしパソコンも一部屋使うぐらいばかでかかった。携帯電話もスーツケースで持ち運びだったらしい。そんな時代にアナログ世界からデジタル世界に飛び込んで、プログラムとユーザーで戦う物語なんて言ってもほとんどの人の頭にははてなの迷宮が広がったことでしょう。まず「プログラム」とか「ユーザー」という言葉と概念が一般人には定着していなかったはずです。
しかし今はどんなに機械オンチでも携帯は持ってるしパソコンだって使える。86年生まれの私の子ども時代はファミコンゲームボーイスーパーファミコンが身近なデジタル世界で、毎年のように新しいゲーム機が発売されました。両親がゲーム好きだったために新しいゲーム機はすぐに買い与えられた私は幼い頃から仮想空間と親しんできたせいか高校生の時に始めたインターネットもすぐにのめり込みました。私より下の世代は生まれた時からこのようなデジタル機器と仮想空間が一般化した世界なのだからアナログからデジタルへの移行期の人々の期待と不安なんて想像できないのではないでしょうか。
この経緯を念頭に置けば、初めてCGアニメーションを映画に用い、デジタル世界を視覚化したことで大きな功績を残した『トロン』がなぜこのタイミングで続編が作られたのかがわかるような気もします。1982年当時の限られたコンピュータ技術でデジタル世界を視覚化するためには意外とアナログな作業が必要で、一度撮影したフィルムを韓国に送って1コマずつ彩色して衣装を光らせていたとか。

82年の『トロン』は技術者にとってはその後の映像技術のヒントを与えましたが一般の観客からはまったくウケず興行収支も低いまま終わりました。実際に『トロン』を見た感想は、脚本もいまいちだし音楽もほとんどないからうーむと思わず唸り声をだして退屈してしまった。というか正直15分ほど居眠りしてしまいました。てへ。最近のCGの美しい映像に慣れてしまった今の私の目には、昔のアーケードゲームファミコンレベルにしか見えず「これのどこがすごいんだろう?いや、でも当時からすればこれは最先端技術であるからしてー」となんか葛藤しながら見ていました(笑)

でもね、今作の『トロン:レガシー』を楽しむためにはやはり『トロン』を見ておいてよかったなって思いましたよ!!ストーリーも繋がっているしタイトルであるトロンが活躍するのは82年の『トロン』なので、今作ではほとんど登場していないのです。「ゼルダの伝説」なのにリンクが大冒険してるアノ現象ですね。

ポリゴンアニメのバイクだったライト・サイクルが進化しまくってカッコイイ!
電飾を付けたフリスビーだったディスクは記憶媒体メモリであり武器にもなる!
衣装だって!ピチピチの黒いタイツとシャツ(下はバレエ用の男性用Tバックを履いていたらしい)と電気回路つけてラグビーやホッケーの防具付けただけだったのにツルっとした高性能スーツになっていて近未来的!!すごいね!!
というこの感動は82年の『トロン』を見た後だからこそ感じるものであって、普通に見たらなんの新鮮さもないSF映画であることは否定できませんっ。いや、でもディスクバトルやライト・サイクルゲームの疾走感、ナイトクラブでの戦闘シーンは迫力があってかなり胸熱ですよ。もうしゅんしゅんっびゅんびゅんっですよ。

主人公のフリン役と彼のビジネスパートナーだったアラン役の俳優さんは82年版『トロン』と同じ人です。27年経ってからまた同じ役を演じるのはなかなかないことですよね。しかもフリンは映画の中で20年経った姿と20年前のままの30代半ばの姿で同じ画面に登場します。30代半ばのフリンの方はてっきり特殊メイクかなんかで若返らせているんだと思っていたけど、実はフェイス・キャプチャーを使ったCGキャラクターなんですって!解剖学に基づいた頭髪や眼の構造や動き、皮膚のシワなんかまで細部までこだわって表現されているので実写にしか見えないクオリティー。

そしてそして。『トロン:レガシー』で映像以外で話題になっているのがフランス出身のDAFT PUNKが手がけるサントラ。実はこの情報を聞いて絶対に観に行きたいと思った私です。DAFT PUNKは怪しげなフルフェイスをかぶった二人から成るサイバー・パンクユニットで、とにかくかっちょいいサウンドです。なんと彼ら自身は82年の『トロン』の影響を受けて今の音楽スタイルになったというから驚きました。今作とDAFT PUNKのコラボは必然だったのかもしれません。出演者の選考や脚本が完成するずっと前から監督たちと製作に加わっていただけあって、彼らの音楽と映像の融合は見事なものです。

ナイトクラブへ行くシーンではDAFT PUNKがDJとして登場していて、あまりの溶け込み具合に爆笑してしまいました。彼らは元々事故によってサイボーグになったって設定だし、トロンの世界の住人だったのですね。もちろんサントラ買いましたが、とても良いです。

本当にお話の内容に全く触れませんでしたが、最後の方はほろほろ泣きました。実は劇場で2回観ましたが2回ともです。なのでどうせ観るなら『トロン』を歯を食いしばって観てから『トロン:レガシー』で泣いて欲しいです。

トロン [DVD]

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Tron Legacy /

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