盛者必衰の理、『新少林寺/SHAOLIN』

私が子どもの頃はキョンシーブームで一日中前習えしてピョンピョンし、愛らしいテンテンちゃんの戦う姿に憧れました。(スイカ頭の爆死は幼心に衝撃)ドラゴンボールを見てはかめはめ波を出す練習に精を出し、少林寺リー・リンチェイを見てははぁっ!はぁっ!ははぁっっっ!!とやったもんです。親が買い与えたリカちゃん人形にはまったく興味を示さず、近所の男の子たちと「たたかいごっこ」なるものに興じ、学校では男の子を泣かせてよく先生に怒られました。そんな私は大人になった今でもやはり人間同士が戦う姿に血沸き肉躍り、来るべき時のためにシミュレーションを繰り返しているわけです。ああいうのって見てるだけでなんか戦える気がする!!かかってこい!!

というわけで私の周りではほとんど評判を耳にしなかった『新少林寺/SHAOLIN』ですが、これ、めちゃくちゃ面白かったです。

時は辛亥革命の翌年1912年、清王朝が倒れてからも国内での覇権争いが続き、ヨーロッパ列強の侵略も激しく混乱を極めていた。一方、少林寺の僧侶たちは傷ついた民衆や兵士たちを助けて一連の戦いからは独立を保っていた。そこへ独裁的な将軍の侯杰(コウケツ)が少林寺に逃げ込んだ敵を追い詰めた。敵が命乞いしたにもかかわらずその場で銃殺し、さらに少林寺を愚弄する。しかしそんな非道な侯杰にも妻と幼い娘の前では良き夫良き父であり愛情たっぷりの家庭を持っていた。すべて順調に見えた侯杰だが、腹心の部下曹蛮(ソウバン)の裏切りにあい愛する者を失い、愚弄したはずの少林寺に助けを求める。

私としてはただの格闘アクションを想像して臨んだのですが、意外とストーリーがしっかりしていて、家族愛や友情、人間いかにして生きるべきかなどとても考えさせられました。非道の限りを尽くしてきた独裁者の没落と改心していく姿にぐっとくる。実際三度ほどほろほろと涙が出ましたよ。

戦闘シーンはお得意のワイヤーアクションで、高速でしゅんしゅん回ったりふわっと滞空したり。少林寺の僧侶たちが美しいフォーメーションで攻撃したりするのも迫力があっていい。時代設定が近代なので銃を向けられたらマトリックスのごとくかわすかお降参するかだけど、意外と敵の方も鎌だとか槍だとか原始的な武器が多かった。

少林寺と言ったら整然と揃ってはぁっ!はぁっ!ははぁっっ!!と修行するシーンだろ!って人は多いと思うのですがそこはちらっとしか出ません。主人公が改心する様子はとても細かく描写されているのですが、身体的な修行シーンがちょっと少ないんですよね。そこからもこの作品が精神的な要素を重視してることが窺えます。

ジャッキー・チェンが出るとの噂を聞いていたのですが一向に出てくる気配なし。中盤でようやく登場したと思いきや少林寺の厨房係とな!!少林寺での修行は挫折し厨房係となったこの男はどでかい鍋をぶんぶん回したりどっぱーんと饅頭の生地をこねたり、まるで「中華一番!」のごとき豪快な料理シーンを披露してくれる。これは後々の戦闘にも生かされることになり、敵の兵士たちがジャッキーに料理されていくシーンはすごく楽しい。『1911』でのシリアス、ノーカンフーなジャッキーを見たばかりだったので、やっぱこういう茶目っ気のある方がジャッキーらしいよね!と思いました。ただ特別出演というだけに本当に本筋とはそれほど絡みはないです(笑)

真の悪役である曹蛮ことニコラス・ツェーは美しくぷっつんクレイジーな感じがよかった。最初はキリッといい男なのにどんどん汚らしくやさぐれていく感じもまたよい。というか本当に美しい。ただちょっと弱い(笑)

最後の死闘はものすごい迫力で、130分という長尺でも飽きさせることはなかったです。エンドロールの荘厳な歌に男泣き!(あたしは乙女だけど!)