中国は未だ革命期、『1911』


わーいジャッキーが出てる!!1911は辛亥革命だね!!世界史選択だったから知ってるよ!!という無邪気な理由で観に行った。がしかし!!つまらんかったぁぁぁぁ。

辛亥革命の内容は高校で習うことだしもう省きましょう。この映画の主な登場人物は中国革命の父孫文とその同朋である黄興(ジャッキー・チェン)、大統領の椅子を狙う袁世凱の三人。その他に同盟会会員のなんちゃらとかもういーっぱい出てきていちいち名前と所属をテロップで出してくれるんだけどあたしのようなメモリ容量の少ない頭では覚えきれない。アメリカやヨーロッパを回って華僑たちに革命を呼びかけたり外交を行う孫文と、中国本土で革命運動の指揮を執る黄興が主軸ではあるがその合間に革命で散っていった若者たちやら朝廷と臣下の茶番、袁世凱の野望などにぱっぱっと切り替わってもう何がなんだか。貧しい民衆のためにとか言ってるくせに金持ちたちの晩餐の様子ばかり映すし、場面がぶつ切りなので人間ドラマもなおざり。感動的な音楽を流されてもこれっぽちも感情移入できません。そして一番突っ込みたかったのが辛亥革命の進捗状況をぜーんぶテロップで解説してしまうところ。革命の1から10までを見せようとした結果ですかね。銃撃戦も臨場感溢れる感じにはなってるけど名前は紹介されてるのに興味のない人間が吹っ飛んでいくだけなので悲惨さも伝わらず。戦闘シーンと直前の文脈が途絶えてるんですよ。影の薄いジャッキーがようやくカンフーしてくれたと思ったら数十秒で終了。(まぁこれは想定内でしたが)

後半で孫文が臨時政府を発足したり袁世凱が絡んできたあたりは少し見れたけどそれ以外は退屈でした。孫文袁世凱は魅力的でしたが。革命の激闘を描きたかったのか、孫文がいかにして革命を説いたかを描きたかったのか、もっと焦点を絞って追っていけば登場人物にも注力できたんじゃないかと思います。あまりにも期待はずれだったのでちらりと他のレビューを覗いたら「歴史大作!」と絶賛してる人が多数だったんです。でも同時代で歴史大作と言えるのは『ラストエンペラー』だと私は思いますよ。みんな本当に眠くならなかったの?

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辛亥革命100年と日本

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青い部屋はダメだよ、『ブルーバレンタイン』

ブルーバレンタイン』(2011)


「今年一番の映画です!!」という感想が多々聞かれたこの作品。どれどれと観に行ってみたのですが…。結論から言えば胸焼けと眩暈を起こして真っ青になってしまうような映画でした。

あるカップルのラブラブ時代と冷え切った現在を交互に映しながら時の流れと二人の愛情の変化をリアリスティックに描こうとした作品。まず冒頭の夫婦のやり取りから見て感じるのは妻のシンディはすでに夫ディーンに対して冷めた態度を示しており、家事、育児、仕事で疲れきって常に苛立っている状態であるということ。対するディーンは娘と無邪気に遊び妻にも冗談を言ったりするが相手にされず結局は妻と娘を見送りながら「マザファカッ」と罵声を浴びせる。ディーンは一見すると子ども好きで陽気な旦那に見えるが、実際は朝から酒を飲み近所のペンキ塗りをする程度の体たらくっぷりで、看護士という激務に追われるシンディはそんな彼が疎ましい。

それでもディーンはシンディとの関係を修復したい気持ちはあり、娘を祖父母の家に預けた機会にラブホテルを予約する。私はディーンを好意的に思いながらシンディの気持ちになって観ていたのだが、シンディと同様ラブホテルには行きたくないと思った。長期間付き合ってセックスも減ってきたカップルがラブホテルに行く理由とは何か?「とりあえず一発ヤれば昔のように燃え上がるだろう」という単純で浅はかな考えによるものだと思う。男性はこれでいいのかもしれないがしかし女性はそうはいかない。せめてラブホテルの部屋が「キューピッドの入り江」だったらきっと内装もピンクや赤のラブリーな感じでちょっとは気分を盛り上げてくれただろうに、ディーンは「未来の部屋」という真っ青で無機質な金属のドアの部屋を選んでしまった。赤などの暖色系は気分を高揚させ、青などの寒色系は沈静させるってよく言うじゃない!!シャワーを浴びるシンディに迫ってそのままセックスの流れに持っていこうとするもあっさり交わされ、思い出の音楽で盛り上げてもダメ。無理やり抱こうとしても歯を食いしばりレイプしているかのよう。悲しい。

とまぁ最初は好意的に見ていたディーンも最終的に女のようにねちねちしつこく挙句の果てに泣き出したり、もう女々しくて見てらんない!!てかたった結婚7年目でなんでこんな疲れきってんのさこの二人は。まだ子どもだってあんなに小さくて可愛い盛りなんだから夫婦の愛情が子どもへと注がれている時期のはずなのに。始まりと終わりしか見せてくれないので途中経過で一体どんなことがこの夫婦に起こっていたのかは想像するしかないのですが、結局この二人はまだ精神的に子どものままなのだと感じました。特にディーンの方。二人の間に積もり積もった鬱憤というのはきっと始まりからすでに悪性因子としてあったもので、当時は恋愛フィルターで見えなくなっていたのだろう。中流階級の家に生まれ医者志望、将来有望と言われていたシンディは素行の悪さが祟ってガチムチな元彼の子を孕んでしまったことが運の尽き。恋の熱に浮かされたディーンが一緒に育てようと言ってくれたのは嬉しいが医者の夢は諦め看護士止まり。おまけに旦那はブルーカラー。歌と絵の才能はあるのに楽な方に甘んじるディーンへの苛立ち。ディーンは憎らしい男の子であるフランキーを本当によく可愛がっているけど、本心では自分の子だって欲しい。そういったことが結婚生活を送るにつれてフィルターがはずれていき現実を突きつけられて「こんな未来を望んでいたんじゃない!!」と駄々をこねた。

もうね、最後の花火とタイトルが出た時なんか吐き気がしましたよ。平日の昼間で一人で見に来てる男性が多かったのだけど、そそくさと席を立ったのは私だけじゃなかったのできっと同じように感じた人はいるはず。おえぇぇ。

マンネリで別れを切り出したいけどずるずる来てしまってるカップルにはこれを二人一緒に観て、「じゃ、そういうことで」とお別れすることをお勧めします。

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空想科学世界、『三銃士』

『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(2011)

もうサブタイトル見ただけでおや?って思うよね。「伝説よりも、ハデにいこうぜ」をキャッチコピーにした史実もクソも関係ねぇ!!という空想科学エンターテイメントな三銃士でした。みんなのミラ様をまんまとちょうだいしたダメな方のポール・W・S・アンダーソン監督と小馬鹿にされていますが、このハチャメチャ三銃士はなかなか面白かったですよ。カッコイイ騎士と綺麗なお姫様。お宝を盗みにお城に忍び込んだり、飛行船で海賊ごっこだってしちゃうよ!子どもの頃に読んだ絵本で好きな要素をぜ〜んぶ詰め込んだようなとにかく何でもありのおもちゃ箱みたい。三銃士といったら『仮面の男』と『アニメ三銃士』なあたしですが、今回の三銃士は本当に別物として楽しめました。

まず、三銃士であるクールなアトス、イケメン神父アラミス、怪力ポルトスはそれぞれ役にはまっていてよかった。しかし彼ら最初は銃士を首にされてやさぐれたニートなんです(笑)飲んだ暮れては国王の衛兵と喧嘩してまた飲んだ暮れる。何か大義のために戦いてぇなぁとか言いながら。
そして主人公のダルタニアンくん。始めて見る顔だと思っていたけど『パトリオット』や『バタフライ・エフェクト』に出ていたのですね。彼の戦闘シーンは爽快で見ていてすごく楽しかった。他の三銃士に比べて圧倒的に身のこなしが軽く、でもまだ未熟な部分もあるのでハラハラドキドキさせられる。ノートル・ダム寺院の屋根上でのロシュフォールとの決戦は見ものです。

我らがミラ様は今までに見たことのないような立て巻きロールにふりふりドレスで、悪女風にうふふっと笑うのが素敵でした。お得意のスローモーションアクションでどやっと決めるミラ様。(その背後には監督のどやっ)そして相方のファッキンガム公爵に扮するオーランド・ブルームはなんか本当にあんたそのキャラでいいの?ってぐらい浮いてました(笑)肩耳のピアスがゲイみたい。大した出番もなく今回も残念な感じでした。彼はやっぱりレゴラスみたいにキラキラした役の方が似合うんじゃないのかなぁ。


そして!!今回のVIP賞はぜひともルイ13世に捧げたい!!もう最初のおバカオーラ満載の登場からしインパクト大。とにかく美意識の高いお方でロンドンで流行なものは余も手に入れたい!とおっしゃる。ファッキンガム公爵に衣装を馬鹿にされてしょんぼりしたとことか、王妃への不器用な愛情とかもう胸きゅん!!このルイ13世役のフレディ・フォックスは今までテレビドラマの俳優をやっていて映画では初のようですねぇ。これからも映画の方も出ていただきたい!

これ、続編も作る気満々のようでオーランド・ファッキン・ブルーム公爵が今度こそ俺が真の悪役やぁ!って感じでした。

アラミスが実は男装の麗人という例の設定だったら『ジャンヌ・ダルク』のイメージでミラ様がいいなぁ。てかミレディより似合ってると思うよと妄想を膨らませるのでした。

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荒野の決闘、『カウボーイ&エイリアン』

カウボーイ&エイリアン』(2011)

カウボーイと…え、エイリアン?!というこの異色の組み合わせに西部劇もエイリアンも好きなあたしは若干の不安と期待で胸をときめかせた。たぶん、馬にまたがったカウボーイが縄をぶんぶんしながらぎゃおーんっと喚くエイリアンを駆逐してうまいこと手なづけ、ゴールドラッシュにフロンティアしていったりする奇妙奇天烈なお話なのだろうと思っていたが意外にも堅実に西部劇していて、エイリアンがうまく溶け込めないままだった。ダニエル・クレイグが出ていなかったら途中で寝てたと思う。

荒野で目覚め泥まみれのクレイグたん。左腕には特撮物の変身ブレスレットみたいのが嵌めてあって取ろうとしてもびくともしない。サボテンの横でしょぼーんと座ってる画はすごく可愛かった。通りすがりの老人だろうが関係なくぼっこぼこにしてカウボーイスタイルに身を包む。これがまた決まっていてめちゃくちゃカッコイイ。もう超絶シブい。どうやら記憶を失くした罪人らしく、町で一番の権力者ドルハイド大佐のバカ息子に喧嘩を売られたり保安官に囲まれたりとにかく絡まれる。それでも冷静沈着、ポーカーフェイス(いつものしょんぼり顔)、マイペースなところが最強の男の風格が出ていてよかった。

ドルハイド大佐のバカ息子はもうほんとうにどうしようもないくらいバカで下品で親の顔が見てみたいもんだ!と思っていたらなんとハリソン・フォードでした(笑)その容貌は年老いインディ・ジョーンズ。冷酷で厳しい大佐っぽく言われているのになんで息子がこんなバカなのよ。そして結局は良き男良き父親面してなんか中途半端。そして一体どこにあたしのサム・ロックウェルが出ているの?とずっと探していたら最初っから出ていた冴えない酒場の店主でした。サム・ロックウェルと言ったらぷっつんクレイジーなキャラのイメージしかないのでこんなに地味な彼の姿は見たくなかったな。

前半はかなり正当な西部劇でエイリアンはいつ出てくるのかしら?クレイグの嵌めてる腕輪はいつ使うのかしら?と長らく待たされることになる。後半では町の人や盗賊や原住民などが一致団結してエイリアンを倒そう!おーっ!てなるけどエイリアンがこれまたクソ弱い。しかもぶっさいく。肩と首の筋肉がマッチョなお兄さん体型でお腹から口やら手やらが出てくる適当にエイリアンっぽい要素入れといたよみたいな。最近のエイリアンの弱体化と造形の雑さは本当にいかんと思う。カウボーイ&エイリアンと銘打ってるからにはエイリアンにだってもう少し気合を入れて欲しい。

↑ステルスのように旋回したり空中からの攻撃はなかなか迫力があってよかったけど肉弾戦はだめでした。

主人公は記憶を失ってるのでその過去の謎解きも一応ストーリーの要になってくるのだけどそこの掘り下げも足りないし、ドルハイド大佐の件は感動的な音楽なども流れたりするのだけどまったく感情移入できず置いてけぼりを食らう。どうせならもっと簡単な設定とキャラ作りでエイリアンとばっこんばっこんやるポップコーンムービーテイストでよかったんじゃないかなぁと思った。でもこれに懲りずに『サムライ&エイリアン』とか撮って欲しいよ。「あ、あの化け物は一体何者でござるか!!」とか言いながらさ。

灰皿テキーラの行く末、『一命』

『一命』(2011)

海老蔵瑛太が出てて三池崇史が監督という情報だけで観に行った『一命』。はっきりいってめちゃくちゃ面白かった。ストーリーは至極簡単、ある貧しい一家が命をかけて家族を守ろうとするお話なのだが現在と過去の回想のバランスが非常にうまくできていて正味二時間一瞬たりとも飽きさせない。
関が原の戦いの後太平の世となり武士道が机上の空論となりつつある時代。庭先に押しかけて自ら切腹を申し出て、思いとどまる代わりに金銭をせびる「狂言切腹」が流行していた。

この作品は原作『異聞浪人記』の二度目の映画化で1962年の『切腹』のリメイクらしい。らしいって言い回しからもお察しの通りこちらの方は見ていません。なのでもしかしたら『切腹』を観ている人と観ていない人では意見が分かれるのかもしれない。海老蔵の役はもう少し年配の役者がいいという声も聞かれたので。しかし海老蔵瑛太満島ひかりのこの若い三人でこれほど重厚感のある空気が作れるのは本当に素晴らしいと思う。もちろん監督の度量でもあるのだけど。

家族のために狂言切腹を実行する千々岩求女(瑛太)は武術よりも学問を愛する心優しい男。彼の壮絶な切腹シーンは見ているこっちまでお腹が痛くなってしまう悶絶っぷり。ぐぁぁぁぁぁっほぉぉぉぉっと苦しむ瑛太は見ものですよ。また、男手一人で育てた大切な娘(満島ひかり)と息子同然に育ててきたその求女の為に一人静かに乗り込む津雲半四郎(海老蔵)は本当にかっこいい。厳しそうに見えても愛情深さが滲み出ていて、観てる側としては応援したくなる。満島ひかりの虚弱で幸薄そ〜〜な感じもまた魅力的でしたね。
断固として武士道を掲げ、大義切腹だと言い切る井伊家と貧しい家族をなんとか救いたいと右往左往する浪人の一家は観ている者の心を揺さぶる。日本の美徳、サムライ精神と言われる武士道も時代が変わればただのお飾り。


最後のチャンバラ劇は爽快!!周りの武士はろくに人を斬ったことがないんだろうなぁというへっぴり腰でただ刀を振り回してるだけって感じ。切り落とされたちょんまげを庭にぺっと捨てたその画はまるでちんこのようで笑えました。武士にとったらちょんまげはちんこのようなものですよね。そりゃ切腹するしかないよねぇ。

求女が井伊家に乗り込んだ時、一旦中へ通されて青い紅葉の和菓子が出される。それを食べずに紙に包んで懐に入れるのだが、その和菓子は後に妻が遺体となった求女の着物から取り出して食べる。そこで青かった紅葉が血によって真っ赤に紅葉していたのに気づいた時は憎い演出だなぁと感じた。

これを観終わってから興奮が冷めず、ちょんまげちょんまげちょんまげマーチ 後ざるでござるでござるでござるぅぅっと歌い狂っておりました。

一命 (講談社文庫)

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不肖の息子が下る、『コクリコ坂から』

コクリコ坂から』(2011)
1980年頃に『なかよし』で連載されたが不発に終わった『港の見える丘』が原作の『コクリコ坂』。
そういう点では『耳をすませば』と似ているのかもしれないけど、私はこっちの方が断然好きですね。

1960年代のノスタルジックな町を若い男女が相合傘しながら、俺たちは兄妹だという衝撃的な告白をする予告編を見て、なんか意外と面白そうじゃないか!!って思ったのです。
つまりこの二人の出生の秘密がなんかあれで物語が展開するってことでしょ?
そしてあのしっとりした主題歌と昨年の『借りぐらしのアリエッティ』の印象から、すごく静かな映画なんだろうなと予想していましたが、意外とジブリらしいお祭り騒ぎもあるし物語の展開もテンポよく進むし、最後まで飽きることなく見ることができました。アリエッティの時みたいに尻切れトンボな感じもなく収まったしね。

・熱い学徒
時代設定は1963年の横浜。
主人公の松崎海と風間俊は学生たちのクラブ活動の場である清涼荘、通称「カルチェ・ラタン」の取り壊し反対騒動の中で出会う。
当時の学生たちは己の思想に燃え、とにかく行動を起こす実直で団結力のある様子で描かれている。
数年後の大学闘争にしろ、みんなで決起して大人に立ち向かう学生の姿って私の憧れであったりするのでいいなぁ熱いなぁと思います。
カルチェ・ラタンはほぼ男子寮のような汚らしさとハリポタの寮みたいにちょっとファンタジックで異空間のような趣があり、まさに学生たちのお城であり秘密基地である。
硬派な男子とチャキチャキした女子のやりとりもまた甘酸っぱい感じがしてよい。
10代特有の男子と女子の距離感がね。

この映画を見た人たちの感想の中で、「なんだこのリア充映画はwww」と言っている人がいましたが、なんか視点がズレている気がしましたね。それこそ純粋に真摯に生きる人を嘲笑する現代のいやらしい目線というか。「共感できないからこの映画は面白くない」というのは違うと思うんですよね。そりゃ共感できたほうがより楽しめるのは確かだけど。


・コクリコ坂のフランス語
カルチェ・ラタンはご存知の通りパリのソルボンヌ大学などの大学が集まる地区であるカルチェ・ラタンにちなんで付けられているし、海のあだ名は「メル」でフランス語のla merから。タイトルである『コクリコ坂から』の「コクリコ」もcoquelicot「ひなげし」を意味していて、海の家の庭にはひなげしがたくさん咲いている。
今でもやたらフランス語をカタカナ表記にしてしゃれおつ感を出したがる傾向はあるけど、当時はもっとかぶれていたイメージがありますね。それこそサルトル実存主義謳歌されていた時代だし。


・どうでもいい話
広小路さんという下宿人の画家?の女性がいるんだけど、「広小路さーん」てのが「ヒロコおじさーん」に聴こえて吹き出してしまいました(笑)事前にそのネタをTwitterで知っていただけにね。
そして生徒会長のインテリイケメン水沼くんがもろタイプです(笑)


こんな感じでね、恋愛ものが好きな女子は結構気に入る人多いんじゃないかなと思いますよ。 あと世代が近い50代の人は懐かしいと感じるはず。
登場人物たちの表情が貼りついていて変化に乏しいとの声も聞かれましたが、ゲドに比べればだいぶ動くようになりました!!(笑)うん。あたしは吾郎を応援してるよ!!パパが偉大すぎるからね。
後半の二人の出生の秘密について展開する辺りでは、もう完全に乙女スイッチ入りましてポロポロ泣いてました(笑)最近涙もろくてねぇwww

コクリコ坂から (単行本コミックス)

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時代に抗う若者たち、『マイ・バック・ページ』

マイ・バック・ページ』(2011)
妻夫木聡×松山ケンイチダブルキャストによる全共闘時代の青春グラフィティー。
決して派手ではないし実在の事件を元にこの二人の人物を追っていくだけなので、映画的な盛り上がりには欠けるんだけど、暗い映画館の中に腰を据えてじっくり見るには適していると思う。

全共闘時代と言ってもすでに末期で、何も行動を起こせないままに終わらせたくない若者たちの最後の悪あがきとでもいえる。
今25歳の私はもちろんこの時代の話は両親から聞かせてもらったり村上春樹村上龍の某小説から得た知識しかない。
でも、「みんなで決起すれば世の中を変えられた」、若者の熱気にあふれていた時代になんとなく憧れを持っていたりする。
この映画に登場する自称革命家の梅山も、全共闘の最盛期に活躍した人たちや三島由紀夫、さらには彼らが拠点としていた部屋の壁に貼ってあった毛沢東チェ・ゲバラなどの革命家たちに憧れを抱いていたんだと思う。
梅山は、自分も彼らのように革命を起こし、その後は逃亡でもなんでもしてやる!そんな意気込みだけが先行して空回りしていたようだ。
実際、冒頭の大学サークルの討論会で梅山があっさり論破されてしまった時なんかは黙り込んだかと思うと「君は敵だ!このサークルは僕が作ったんだ!」とまるで子どものような発言をする。
それらしい言葉を並べ立てて調子のいいことを言っておきながら結局中身は空っぽ。
ちょっと非難されたり指摘されるとムッとしてみたり。
でも私自身大学時代を振り返ると、「何かデカいことをしてやる」と漠然と思いながら仲間と酒を飲んだり歌ったりした生活をしてくすぶっていたことがあるので、なんとなく梅山の気持ちもわかる気がする。

一方、若きジャーナリストの沢田は梅山の革命家ぶった口調や雰囲気に飲まれ、厄介なことに首を突っ込むことになる。
大人の目から見れば梅山が口ばかりの人間であることは簡単にわかるのに、沢田はC.C.Rのギター演奏と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』であっさり梅山を信じてしまう。
新聞や週刊誌ではまだまだ過激な弁論や運動の行方が注目される中、センチメンタルだと上司にバカにされた東京放浪記は意外と評判がよく微妙な表情をする。
自衛隊基地襲撃事件と逮捕によって一気に現実へと引き戻される。
「思想犯ではなく殺人犯」
思想で暴力が横行する時代の終幕だった。

昭和の雰囲気を出そうとインテリアや衣装などのディティールにこだわっていて粒子の粗い画面がかなりいい感じだったと思う。まぁ当時の姿を知る人にとっては違うよ〜ってなるのかもしれないけれど。
妻夫木は『69』、松山は『ノルウェイの森』でこの時代と縁のある二人なので、その演技力はかなり見もの。
結構長い映画なので途中で飽きちゃったという声も聞くんだけど、私は最後まで集中して見ることができました。
みんな言ってるけど、ラストのブッキーが泣くシーンは最高ですね。
生きた時代は違えど、こういう忘れられない一ページというものが誰しも青春時代にあるんだと思います。

ちなみに梅山はタバコを吸うときマッチ派、沢田はジッポー派というのがお気に入りです。

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